原著論文・学術大会

第67回 全日本鍼灸学会 学術大会PDF

第67回(公社)全日本鍼灸学会 学術大会 大阪大会 健康・長寿を支える鍼灸学
-新たなるエビデンスとナラティブへの挑戦-
会期 2018年6月2日(土)・3日(日)
会場 ハイアットリージェンシー大阪 森ノ宮医療大学

129 2-P-E1(2) - 14:24 pp.224
鼠径ヘルニアに対し鍼灸治療が有効であった1症例
蛍東洋医学研究所
大塚 信之

【目的】外科手術が唯一の治療法とされる鼠径ヘルニアに対し鍼灸治療を行い、効果が得られたので報告する。

【症例】54歳、男性。主訴:右鼠径部の膨隆。現病歴:右鼠径部の膨隆に気付き、総合病院の外科を受診。触診で鼠径ヘルニアと診断され、自然治癒しないため外科手術を指示された。立位で右鼠径部に膨隆と軽度の牽引痛有。随伴症状は頸肩部痛。虫垂炎手術歴有。舌診は淡紅舌,薄白苔,胖嫩舌。脈診は沈,平,虚。太衝と京門に圧痛。臓腑弁証は肝虚証とした。

【治療】本治法:肝虚証から曲泉等に刺鍼。標治法:商丘,大巨,外関,足臨泣に半米粒大透熱灸を5~9壮。太衝や膨隆部(気衝,帰来)に灸点を適宜追加した。治療頻度は週6回を基本とし、6か月継続。

【評価】立位にて膨隆部を含む下腹部の写真を週1回程度で撮影。画像から、左側同一部位を基準とした右側膨隆部の高さの差を膨隆量として算出した。

【結果】膨隆量は治療開始時の2.3mmから5ヶ月後に0.5mmに減少。減少速度は0.3mm/月(n=18,r=0.96)であった。全体的に膨隆が縮小し、牽引痛は解消した。

【考察】'現代外科学大系'より、鼠径ヘルニアは30~40人に1人と高頻度に発症(発症率1.5%)。一方で PubMedでは鼠径ヘルニア術後痛緩和の報告は複数あるが、鼠径ヘルニア自体の鍼灸治療の報告は検索されない。'鍼灸治療基礎学'等では鼠径ヘルニアによる疼痛を狐疝として、疼痛緩和の治療穴が報告されている。'黄帝内経霊枢'では狐疝を肝所生病としており臓腑弁証と符合した。鼠径ヘルニア自体(脱腸)の治療穴は、症例報告がある'鍼灸治療の実際'の大巨、'鍼灸医学'の商丘,帰来、'鍼灸治療学'の気衝、奇経反応点の外関,足臨泣より選定して効果を確認した。

【結語】鼠径ヘルニアは、自然治癒せず外科手術が唯一の治療法とされるが、右鼠径部の膨隆量が減少したことから鍼灸治療の効果が示唆された。

キーワード 鼠径ヘルニア, 狐疝, 商丘, 大巨, 奇経


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 〒560-0033 大阪府豊中市螢池中町3丁目8-14
 E-mail: hari@otsuka.holding.jp

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