原著論文・学術大会

第71回 全日本鍼灸学会 学術大会PDF

第71回(公社)全日本鍼灸学会 学術大会 東京大会
現代医療における鍼灸の役割
-未来に向けての鍼灸のチカラ-
期間 2021(令和4)年6月3日(金)~6月5日(日)
会場 東京有明医療大学・有明ガーデンコンファレンスセンター(ハイブリッド)

037-筋・体組成 10:54 pp.162
体重の時系列分析による鍼灸治療効果の検討
1) 蛍東洋医学研究所
2) 大塚鍼灸院
3) 明治東洋医学院専門学校
大塚 信之1, 2)、半田 由美子3)


【目的】情報通信技術(ICT)の進展により、大容量の生体情報の連続取得が可能となった。 生体情報の中でも生活習慣病予防の重要な要素となる体重を、日々計測して時系列に分析することで、鍼灸治療効果を検証する。
【方法】37歳の女性に、7日毎の鍼灸治療と、毎日の起床時体重Wnの測定を基本として2年間実施した。 治療は、証に応じて五行穴に刺鍼後、中脘、気海、大巨、次髎への透熱灸、耳の神門点、胃点(憂鬱点)、飢点(バリウム類似物点)、内分泌点(TSH点)への置鍼と何れか一点への円皮鍼貼付とした。 食餌制限と運動療法も実施した。 時系列分析の傾向変動は、1日の体重減少量をCw(Wcn-Ws)として、 n日目の体重Wcn=Ws+(Wc0-Ws)(1-Cw)nを計算した。 ここで、Cwは定数、Wsは標準体重51.5kg(ボディマス係数BMI=22)、Wc0は0日目のWcnとした。 循環変動は、Wn-Wcnの離散フーリエ変換(DFT)により求めた。
【結果】治療は101回、体重測定は656回実施した。体重は99.4kg(BMI=42)から66.0kg(BMI=28)に減少した。 Wc0=94、Cw=0.0015とすることで、測定値Wnと計算値Wcnは良く一致した(相関係数R=0.99)。
【考察】DFTの結果、7日と30~40日に複数の極大値が認められた。 循環変動の要因を明らかにするために、治療日を起点とした体重変化の平均値と標準偏差を算出した(データ数N=84)。 治療1日後に0.2±0.6kg減少し、3日後に0.2±1.0kgに増加した後に減少する7日間の周期性が認められ、鍼灸治療効果が示唆された。
生理日を起点とした体重変化は、生理前が高く、生理9日後には-0.6±0.8kgに減少した(N=21)。 生理周期が31±4日であることから、30~40日の極大値は生理前後の体重変動に関係しており、鍼灸治療効果の検証には生理周期の考慮も重要と考えられる。
【結語】体重の時系列分析により、体重減少に及ぼす鍼灸治療効果や生理周期の影響が示唆された。

キーワード 体重、時系列分析、循環変動、フーリエ変換、生理周期


住所
1, 2) 〒560-0033 大阪府豊中市螢池中町3丁目8-14
  E-mail: hari@otsuka.holding.jp

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