原著論文・学術大会

第70回 全日本鍼灸学会 学術大会PDF

第70回(公社)全日本鍼灸学会 学術大会 福岡大会
健康・医療のブレークスルーと鍼灸
~からだとこころをとらえる五感の医術~
進歩、前進、打破、変革、それがブレークスルー 令和の医療に鍼灸はどう関わるか?
会期 2021(令和3)年6月4日(金)~6日(日)
会場 オンライン開催(福岡から発信)

005-灸 pp.128
知熱灸の燃焼特性と加熱効果の艾炷高さ依存性
1) 蛍東洋医学研究所
2) 大塚鍼灸院
3) 明治東洋医学院専門学校
大塚 信之1, 2)、半田 由美子3)


【目的】燃焼中の知熱灸の艾炷を目標の温度で取り除くために、高さの異なる艾炷を用いて燃焼時間や燃焼部高さを明らかにする。
【方法】艾炷(灸頭鍼用中級品、若草印、山正)を、底面径dが20mm(母指頭大、高さh0=16、24、32mm)と 10mm(大豆大、h0=8、12、16mm)の円錐形状とした。 艾炷体積から、艾炷密度ρ=0.1g/cm3となる艾炷重量とした。 檜板上に設置したK型熱電対を用いて艾炷底面中央部の温度Tを各6回測定した。 温感が得られる上昇温度ΔTの目標値を15℃、熱感では25℃とした。燃焼時間は点火から15℃、加熱時間は1℃から15℃の時間とした。 燃焼部高さhは艾炷底面から燃焼部の距離とした。
【結果】艾炷が高くなると、燃焼速度は、d=20mmで173±12から227±7μm/秒、10mmで273±20から358±25μm/秒に増加した。 燃焼時間は、d=20mmで35±3から80±1秒、10mmで13±2から28±2秒に増加した。 加熱時間は、d=20mmで13±2から23±1秒、10mmで5±1から8±1秒に増加した。 15℃と25℃となる燃焼部高さは、艾炷高さ依存性が小さく、d=20mmで10.7±0.7と9.4±0.4mm、10mmで5.2±0.6と4.2±0.4mmとなった。
【考察】上昇温度はΔT(℃)=TAd2(h0-h)/h01.2 exp(-2aρ1/3 h)で示された。 ここでTA=1.66、aは艾の吸収係数2.5cm-1。 底面径の0.5から0.55倍の燃焼部高さでΔT=15℃となり、温感を得るには底面径の半分の燃焼部高さを目安に艾炷を取り除くことができる。
同一の総艾量での多壮灸に相当する、艾重量あたりの加熱時間は、艾炷が高くなると減少した。 平均値はd=20mmで71±9秒/g、10mmで209±42秒/gとなり、底面径が小さいほど時間が長く、面積あたりの加熱効果は高いと考えられる。 艾炷が高くなると、15℃での1秒あたりの熱量は、d=20mmで5.4±0.9から3.4±0.3mW、10mmで12.7±2.1から8.3±1.2mWに減少した。
【結語】ΔT=15℃(温感)を目標に艾炷を取り除く場合、艾炷高さ依存性は小さく、底面径の半分の燃焼部高さを目安にできる。

キーワード 知熱灸、艾炷、底面径、燃焼特性、加熱効果


住所
1, 2)〒560-0033 大阪府豊中市螢池中町3丁目8-14
  E-mail: hari@otsuka.holding.jp

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