原著論文・学術大会

第68回 全日本鍼灸学会 学術大会PDF

第68回(公社)全日本鍼灸学会 学術大会 愛知大会
女性のミカタ
~Hari-Kyu for women's lives~
会期 2019(令和元)年5月11日(土)・12日(日)
会場 名古屋国際会議場(愛知県)

217 2-P-I (4) -14:36 pp. 236
灸頭鍼から輻射される光の皮膚吸収特性
1) 蛍東洋医学研究所
2) 明治東洋医学院専門学校
大塚 信之1)、半田 由美子2)


【目的】灸頭鍼による皮膚の加熱は、燃焼時に輻射される光(輻射光)の吸収量に依存するため、皮膚各層での吸収特性を明らかにする。
【方法】艾球(1g、半径R=10mm、灸頭鍼用中級品、若草印、山正)を鍼柄(Lタイプ、50mm、0.25mm、 セイリン)に装着。 K型熱電対を用いて艾内部の温度(上端、中央、下端、側壁)と艾の直下部の檜板上の 温度TL及び煙消失時間を測定した。 艾最下部と檜板の距離L=30~50mm。点火位置は艾の上部、下部、上下、左右の4種類。各5回測定し、有意水準は5%とした。
【結果】上昇温度ΔTLの最高値に点火位置の有意な差は無く、 最高値を示す時間の相関が最も高い測定点は艾下端温度TBであった(相関係数r=0.82)。
ΔTL(℃)= 1.04×109((TB+273)4-(T0+273)4)R2/(R+L)2となった(周囲温度T0)。
以降は熱痛を感じない温度となるL=50mmとした。TBより求めた輻射光の量(輻射量)の最大値と時間積分値(総輻射量)は左右点火時が最も高いが、点火位置に有意な差は無い。 煙消失30秒後迄の輻射量は下部点火では総輻射量の77%と高く煙消失が目安となるが、上部(40%)、上下(61%)、左右(48%)では難しい。
【考察】ヒトの皮膚構造(表皮[厚み0.1mm、水分量30%]、真皮[1.9mm、70%]、皮下組織)に基づく水の吸収特性から、輻射光(TB=700℃)は表皮で最も吸収され(59%)、皮下組織に僅かに到達(2%)。 主な吸収波長は表皮2.8μm以上、真皮1.4~6μm、皮下組織0.8~2.4μmと赤外線領域となる。
各層の吸収量は E(W/m2)=εEAR2/(R+L)2、EA=exp(-a+b×ln(TB+ 273))、
放射率ε~0.9、表皮(a=13.1、 b=3.40)、真皮(24.8、5.04)、皮下組織(63.3、10.21)。 TB=500℃に対して700℃では真皮1.3倍、皮下組織4.1倍にEAが増加。 ΔTLが同じでもTBが高いほど皮膚深部での吸収が増加し、加熱効果が期待される。
【結語】灸頭鍼の直下部温度ΔTLは艾下端温度TBと相関が高い。 輻射光の皮膚吸収量EAの計算から、ΔTLが同じでもTBが高いほど皮膚深部の加熱効果が期待される。

キーワード 灸頭鍼、輻射光、皮膚、吸収量、点火位置


住所
1) 〒560-0033 大阪府豊中市螢池中町3丁目8-14
  E-mail: hari@otsuka.holding.jp

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