原著論文・学術大会

第72回 全日本鍼灸学会 学術大会PDF

第72回(公社)全日本鍼灸学会 学術大会 神戸大会
鍼灸学の次代展望
-経験から学び、持続可能なエビデンスをつむぐ-
期間 2023(令和5)年6月9日(金)~6月11日(日)
会場 神戸国際会議場(ハイブリッド)

010 灸-基礎 14:00 pp.122
温覚閾値における円錐状艾炷の加熱特性
1) 蛍東洋医学研究所
2) 大塚鍼灸院
3) 明治東洋医学院専門学校
大塚 信之1, 2)、半田 由美子


【目的】前回の報告では、知熱灸で温感と熱感を得ることを目標に、燃焼中の円錐状の艾炷を上昇温度ΔTが15℃と25℃で取り除く目安を示した。一方で、知熱灸は温かさを感じたらすぐに艾炷を取り除く場合がある。温かさを感じ始める温覚閾値を目標に艾炷を取り除くために、高さや底面径の異なる艾炷を用いて、艾炷を取り除く目安を明らかにする。
【方法】艾炷(灸頭鍼用中級品、若草印、山正)を、底面径dが20mm(母指頭大、艾炷高さh0=16、24、32mm)と10mm(大豆大、h0=8、12、16mm)の円錐形状とした。艾炷の密度ρは0.1g/cm3とした。檜板上に設置したK型熱電対を用いて艾炷底面中央部の温度Tを各6回測定した。ΔTの目標値は、温覚閾値の報告の範囲内の1℃と5℃とした。燃焼部高さhは艾炷底面から燃焼部までの距離とした。
【結果】艾炷高さが12mmから16mmに33%増加すると、点火後にΔT=1℃となるまでの燃焼時間は10.5±0.4秒から18.6±1.8秒に77%増加した。ΔT=1℃となる燃焼部高さは8.2±0.5mmから8.9±0.5mmと9%の僅かな増加となった。艾炷やΔTが高いほど燃焼部高さの艾炷高さ依存性は低下した。
【考察】ΔT が15℃に比べ1℃程度と低い場合は、燃焼部と温度測定点の距離が離れているため、燃焼部は点光源とみなされ、輻射光のエネルギーは距離の2乗に反比例する。その結果、上昇温度はΔT(℃)=TA {d2(h0-h)/h0}2/h2 exp(-2aρ1/3 h)で示された。ここで、比例係数TA=0.4、艾の吸収係数a=0.25mm-1とした。底面径の1.2倍より艾炷が高い場合は、燃焼部高さが底面径の80%程度でΔT=1℃となるため、温覚閾値では底面径の80%の燃焼部高さを目安に艾炷を取り除くことができる。艾炷が高いほど、早めに艾炷を取り除くとよいことが判った。
【結語】温覚閾値を目標にΔT=1℃で艾炷を取り除くには、艾炷の底面径の1.2倍より艾炷が高い場合は、底面径の80%の燃焼部高さを目安にできる。

キーワード 温覚閾値、円錐状艾炷、知熱灸、艾炷高さ、底面径


住所
1, 2) 〒560-0033 大阪府豊中市螢池中町3丁目8-14
  E-mail: hari@otsuka.holding.jp

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