蛍東洋医学論文誌 JHTOM 010301
Vol. 1, No. 3, 2014
0.5M
下部尿路機能障害に対する鍼灸治療の効果
Acupuncture and Moxibustion Therapy Relieves Lower Urinary Tract Dysfunction
大塚 信之 所属 住所
Nobuyuki Otsuka Affiliation Address
あらまし
高齢化が進む日本では、高齢者を中心に下部尿路機能障害が急速に増加している. 下部尿路機能障害は、西洋医学的治療として有効な薬剤が提供される一方で、副作用がある場合や特発性疾患などでは東洋医学的アプローチが期待され、中髎穴への刺鍼や中極穴への温灸の効果が報告されている. また、三陰交穴への刺鍼ではランダム比較試験による有効性が確認されている. 今回、経穴の特性をもとに、中髎穴および近接する小腸兪や膀胱兪の効果について考察し、主治として頻尿、夜間頻尿、尿漏が示されることを確認した. 三陰交穴および中極穴は、腎陽虚の治療穴として説明できた.また、脾腎陽虚の治療穴として足の陽明胃経の経穴の効果確認の必要性を示した.
キーワード 下部尿路機能障害、過活動膀胱、頻尿、尿意切迫、尿失禁、東洋医学,鍼灸治療
1.はじめに
日本において排尿症状を訴える患者は、年齢を重ねるに従い急激に増加する.サンプル調査によると、過活動膀胱の有病者は、日本には840万人程度と推計されている.40代は5%程度であるが、60代で13%、70代で24%、80代で37%となっており、70代になると顕著となる傾向にある.女性は男性より2~5ポイント少ないが、同様の傾向がある.症状の内訳は、夜間頻尿で約60%と最も多く、次が中間頻尿で50%、尿勢低下、残尿感と続く.これらは男性が多いが、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁は女性のほうが多くなっている.
鍼灸治療施設に通院する患者の排尿症状を調べた結果、女性が多く、ピークは60代となる.主訴は運動器系で受診しているが、問診を行うことで排尿障害があるケースが40%程度あった.クロス集計の結果、就寝時にトイレに複数回行く患者は、尿意切迫や残尿感も持つ場合がある.患者の約半数は尿漏れはないが、残りの半数は尿失禁がある.頻尿の場合は、治療中にトイレに行く必要がある患者がおり、一般的な治療時間である1時間ももたない場合もある.従って、問診でトイレに複数回行くという患者に対しては、尿意切迫や残尿感について詳しく聞く必要がある.
排尿症状をはじめとする下部尿路障害は、高齢化が進むに従い今後ますます重要となる.今回、下部尿路障害に対する鍼灸効果の報告を整理するとともに、経穴の特性から効果を考察する.
2.排尿障害の分類
排尿症状としての下部尿路機能障害(LUTD:Lower Urinary Tract Dysfunction)には、蓄尿症状(貯める時に問題がある)、排尿症状(排尿の時に問題がある)、排尿後症状(排尿後に問題がある)の3つがある.また、代表的疾患としては、過活動膀胱、前立腺肥大症、低活動膀胱、腹圧性尿失禁などがある.
2.1 畜尿症状
蓄尿症状には、昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁等がある.昼間頻尿は、日中の排尿回数が多い愁訴で、一般には8回以上である.夜間頻尿は、夜間に1回以上起きなければならない愁訴.尿意切迫感は、急に起こる抑えられない強い尿意で、我慢することが困難な場合である.尿失禁は、尿が不随意に漏れる愁訴である.切迫感もある場合は、切迫性尿失禁という.
2.2 排尿症状
排尿症状には、排尿困難、尿勢低下、尿線分裂、尿線散乱、尿線途絶、尿線遅延、腹圧排尿、終末滴下があり、極端な場合は尿が出ない尿閉がある.
排尿困難は、順調な尿の放出ができず、排尿症状をきたす状態である.尿勢低下は、尿の勢いが弱い愁訴で、通常は、以前との状態の比較あるいは他人との比較になる.尿線分裂は尿線が分裂することで、尿線散乱は尿線が散乱する愁訴となる.尿線途絶は、尿線が排尿中に1回以上途切れる愁訴.排尿遅延は、排尿開始が困難で排尿準備ができてから排尿開始までに時間がかかる愁訴である.腹圧排尿は、排尿の開始時や、尿線の維持または改善のために、腹圧を有するという愁訴.終末滴下は、排尿の終了が延長し、尿が滴下する程度まで尿流が低下する愁訴である.
2.3 排尿後症状
排尿後症状には、残尿感、排尿後尿滴下がある.排尿後とは、排尿直後に見られる症状で、男性では便器から離れた後、女性では立ち上がった後の症状を意味する.
残尿感は、排尿後に完全に膀胱が空になっていない感覚がする愁訴.排尿後尿滴下は、排尿直後に不随意に尿が出てくる愁訴である.
2.4 過活動膀胱
過活動膀胱OAB (Overactive Bladder)は、排尿筋の過活動が原因の畜尿症候群である.2002年国際禁制学会 (ICS2001)で、「尿意切迫感を主症状とし、通常はこれに昼間頻尿や夜間頻尿を伴い、場合によっては切迫性尿失禁を伴う症状症候群」と定義された.切迫性尿失禁の有無に関わらず、頻尿および夜間頻尿を伴う尿意切迫を特徴とする症候群である.従って、過活動膀胱は、尿意切迫感があれば対象となり、尿失禁がなくてもよく、過活動膀胱は排尿障害の広い範囲を扱うことになる.
2.5 前立腺肥大症
前立腺肥大症は、前立腺の移行領域(尿道周囲線)に結節ができ、その後に結節の肥大が起きる.この肥大により下部尿路機能障害を呈したものが前立腺肥大症と呼ばれる.男性のみに発症する.前立腺肥大症の特徴は、畜尿症状と排尿症状が共存しており、排尿後症状としては残尿感を訴える.
3. 過活動膀胱の分類と診断方法
3.1 過活動膀胱の分類
過活動膀胱は、神経が原因の神経因性過活動膀胱と、神経が原因でない非神経因性過活動膀胱に分かれる.
3.2 神経因性過活動膀胱
神経因性過活動膀胱は、脳血管障害や脊髄損傷が原因となる、脳幹部橋より上位の中枢の障害である.脳の血管障害が最も多く、脳卒中慢性期には30~50%の患者に過活動膀胱が認められた.また、脳梗塞などにおいては、後遺症がなくなっても過活動症状は残ることがある.神経系が障害を受けた結果、神経因性過活動膀胱を発症する.脳梗塞の後の過活動膀胱は、脳幹部の橋の排尿中枢に対して、前頭葉からの神経による抑制性投射が脳の病変により障害される、脱抑制が原因となり頻尿が起こるというメカニズムが提起されていた.しかしながら、最近では、前頭葉からの抑制性投射の障害も一因ではあるが、むしろ前頭葉を中心とした脳幹に対する排尿を促進する促進性投射の亢進が特に橋に対して働くことが大きな要因であると考えられている.
3.3 非神経因性過活動膀胱
非神経因性過活動膀胱の原因は、原因不明の特発性過活動膀胱、下部尿路閉塞BOO(Bladder Outlet Obstruction)、加齢、女性骨盤底障害、特発性に分類される.特発性過活動膀胱が最も多く、鍼灸の適用が期待されている.下部尿路閉塞は、前立腺肥大症等が知られており、尿道閉塞自体から生じた排尿障害と、尿道閉塞から二次的に生じた膀胱機能の変化に関連した畜尿障害がある.
非神経因性過活動膀胱のメカニズムは、膀胱の平滑筋の状態が変化することにより生ずるとして説明される.過活動膀胱では、膀胱が伸展した状態において、強く収縮するという状態が続く.その結果、副交感神経のアセチルコリンが過敏になったり、膀胱の近くの感覚神経が過敏になる現象が生じる.具体的には、膀胱の求心路においてアデノシン三リン酸ATPとプリン受容体P2Xが過敏になる.膀胱が伸展するとAδ神経繊維を通じいて信号が伝わる.尿が出にくいときに膀胱の平滑筋を収縮させると、膀胱の尿路上皮にあるC神経繊維から情報を中枢に上げるために、2つの情報が拮抗することで膀胱は不安定な状態となる.一方、C神経繊維の終末受容体のATPは、プリン受容体が異常な状態になるとC神経繊維が活性化して、信号を中枢に上げるという報告もある.
3.4 過活動膀胱の診断
過活動膀胱の診断は、自覚症状に基いて行われる.そのため、主症状となる尿意切迫感や頻尿などの畜尿症状の有無を適切に問診する必要がある.また、診断にあたっては、他疾患として、膀胱癌、膀胱炎、膀胱結石、前立腺癌などを除外する必要がある.
4. 過活動膀胱治療のメカニズム
排尿機能に影響を及ぼす疾患として、脳梗塞モデル、下部尿路閉塞モデル、酢酸誘発頻尿モデルがある.それぞれのモデルに対して、ラットを用いて過活動膀胱の治療メカニズムに関する報告がある.
4.1 脳梗塞モデル
脳梗塞モデルを検討するために、中大脳動脈に梗塞を起こさせたラット20匹を使用した報告がある[1].左側の内頚動脈より中大脳動脈起始部へナイロン糸を留置して左中大脳動脈に梗塞を起こすと、ラットは右回りに動くようになるとともに、頻尿となる.膀胱にポリエチレンカーテルを挿入して膀胱内圧を測定した.無麻酔にするために、ボールマンゲージ内にラットを拘束した.生理食塩水を注入することで、膀胱の内圧曲線を測定し、膀胱容量を求めた.鍼刺激は、仙骨部(S3付近)に直径0.3mmの鍼を刺入し、手による半回旋刺激を1分間実施した.頻尿緩解剤として、抗コリン剤であるムスカリン受容体拮抗薬のオキシブチニンOxybutyninを投与した.オキシブチニンは、過活動膀胱の治療薬として第一選択となっている.薬剤投与経路は、頸静脈にポリエチレンカーテルを留置した.評価は、排尿に至らない膀胱収縮NVCs (Nonvoiding Contractions)、膀胱容量、最大膀胱収縮圧とした.
膀胱容量は脳梗塞前は1.3mLと大きかったが、脳梗塞後には0.5mLと半分以下に減少した.鍼治療後は膀胱容量が0.8mLとなり、梗塞前の60-70%程度まで改善した.鍼治療と薬剤治療を比較するために、膀胱容量が脳梗塞前1.1mLから脳梗塞後0.4mLに低下したマウスに抗コリン剤をoxy100μg投与した結果、膀胱容量は0.7mL となり、鍼治療と薬物治療は同程度の改善を示した.
一方で、梗塞後は尿意切迫を表す膀胱の収縮が生じるが、鍼治療をすると排尿に至らない膀胱収縮NVCsの頻度を小さくすることができる.これを人間に当てはめると、尿意切迫の頻度が減少し、QOLを改善することができる.ラットへのoxy100μg投与後はNVCsは8例中3例(38%)で発生しており、畜尿期におけるNVCsの発現頻度は平均3回であった.NVCs確認後に仙骨部への鍼刺激を実施した結果、NVCsが0.7回に改善された.
NVCsの改善を検証するために、橋にある、バーリントン核に電極を入れて活動を測定した.その結果、一定の間隔で膀胱収縮する時にバーリントン核が活動していることがわかった.仙骨部に刺鍼すると収縮が抑制され、鍼治療によりバーリントン核の影響を抑制できることがわかった.
4.2 下部尿路閉塞モデル
下部尿路閉塞モデルを検討するために、排尿機能に及ぼす鍼刺激の影響に関して報告がある[2].ラットの尿道に尿が出くくなるような下部尿路閉塞BOO (Bladder Outlet Obstruction)の病態を表現する前立腺肥大症の疾患モデルである下部尿路閉塞モデルラットを作成した.2週間すると結合組織が生じて前立腺肥大モデルができる.その結果、膀胱の収縮が激しく起こるようになる.排尿筋の過活動を示唆する畜尿期において、排尿に至らない膀胱収縮NVCsを指標とした.評価は、下部尿路閉塞処理をした無刺激群(8例)、下部尿路閉塞処理に加えて膀胱内圧測定中に仙骨鍼刺激を実施した鍼刺激群(8例)、下部尿路閉塞処理に加えて膀胱内圧測定中にプラゾシンPrazosinを投与したプラゾシン群(8例)で行った.プラゾシンは、血管平滑筋細胞上のアドレナリン作動性α受容体を遮断する薬物で、交感神経の血管支配を切って血管を拡張させ血圧を下降させる.多数のα受容体遮断薬のうちプラゾシンが臨床的によく用いられる.
鍼刺激群とプラゾシン群で、排尿に至らない膀胱収縮が低減できることが統計的に検証された.最大収縮圧は、プラゾシン群では減少したが、鍼刺激群では減少が認められなかった.
また、ラット膀胱に対する仙骨部鍼刺激と、抗コリン作用やα1 受容体遮断作用を有する薬剤との効果について検討した結果も報告されている.SD 系雄性ラット36 匹を用いて 麻酔下にて膀胱内にカテーテルを留置した.留置後4日もしくは5日目にボールマンケージ内での覚醒下で膀胱内圧測定を行った.膀胱内圧測定は生理食塩水の持続注入にて行った.賦形剤vehicle、アトロピンatropine、プラゾシンprazosinの薬剤投与のみの3 群、およびそれぞれの薬剤投与後に仙骨鍼刺激を併用した3 群の計6 群に分類し検討した(各群とも6例).評価項目は、9 回の排尿収縮における排尿間隔、最大膀胱内圧および排尿閾値圧とした.
排尿間隔は各群とも統計学的に有意な変化はみられなかった.最大膀胱内圧はアトロピンあるいはプラゾシン投与群において有意な低下がみられた(P<0.05).排尿閾値圧は、アトロピンあるいはプラゾシン投与では、有意な変化は認められなかったが、賦形剤、アトロピン、あるいはプラゾシン投与後に仙骨部鍼刺激を併用した3群においては排尿閾値圧の有意な低下がみられた(P<0.05).以上のことから、ラット膀胱に対して仙骨部鍼刺激は抗コリン作用、α1 受容体遮断作用とは異なる作用機序で排尿反射に抑制的に作用することが示された.下部尿路症状に対する各種薬剤投与に加えて仙骨部鍼治療を行なうことにより、臨床症状の改善が期待されることが示された.
4.3 酢酸誘発頻尿モデル
酢酸誘発頻尿モデルを検討するために、頻尿に関する仙骨部鍼刺激の効果も報告されている[3].酢酸をラットの膀胱内に注入することにより膀胱炎を発症させ、頻尿を起こした.膀胱に生理食塩水をためて、覚醒下にて膀胱内圧測定を行い、頻尿誘発は0.25%酢酸液を膀胱内に60分間持続注入した.Sprague-Dawley雌性ラット(28例)を用いて、対照群、鍼刺激群、カプサイシン脱感作+鍼刺激群とした.評価項目は、排尿間隔、基礎圧、排尿閾値圧、最大膀胱内圧とした.
酢酸により膀胱を収縮させると排尿間隔は1/3程度になる.酢酸誘発頻尿ラットへの仙骨部への刺激後は、排尿間隔が140%増加し、延長が確認された.頻尿ではない場合、仙骨に鍼刺激を行っても排尿間隔は若干伸びる程度となる.増加率は、鍼刺激群は対照群に対して有意な差が得られた(p<0.01).カプサイシン脱感作+鍼刺激群の増加率は97.8%となり、カプサイシン脱感作を行った場合は鍼刺激による排尿間隔の変化は認められなかった.
酢酸モデルでは、尿路上皮のカプサイシン感受性C繊維の終末部のプリン受容体にATPが作用する場合には、C繊維の抑制により頻尿を改善させる上で刺鍼が効果があることがわかった.そこで、ATPが作用する可能性があるとともに、C線維にも影響することを、いくつかのモデルを使って調べて、鍼刺鍼により改善する検討が進められている.
酢酸を使ったモデルでは、上位中枢と抹消のどちらにも作用していると考えられる.上位中枢の研究は、バーリントン核ではなく、背側外側被蓋核で取ったケースも同じ結果が示されており、上位中枢も同様な効果が得られると思われる.
5.過活動膀胱に対する治療
5.1 過活動膀胱の西洋医学的治療
排尿障害の検査では、カテーテルを入れて膀胱検査をする.膀胱検査は保険点数が高いために高い頻度で実施されているが、治療時は膀胱収縮を抑制する薬として抗コリン剤の処方が一般的であった.過活動膀胱でも、治療薬として膀胱の平滑筋の弛緩作用のある抗コリン剤として、オキシブチニンOxybutyninが第一選択となっている.抗コリン剤には、オキシブチニン以外に、抗ムスカリン作用とカルシウム拮抗作用を有するプロピベリンPropiverine、ムスカリン受容体拮抗薬のトルテロジンTolterodine、抗ムスカリン作用を有するトロスピウムTrospiumやプロパンテリンPropanthelinなどがある.これらの治療薬には、口渇等の副作用の課題があった.
抗コリン剤以外にも、平滑筋の弛緩作用を持つフラボキサートFlavozate、全身的な抗ムスカリン作用を持つ抗うつ剤のイミプラミンImipramine、C繊維を選択的に刺激して脱監査作用により刺激に反応しない状態を生み出すカプサイシンCapsaicinやレジニフェラトキシンResiniferatoxin、コリン作動性神経からのアセチルコリンの放出を抑制することで膀胱の収縮を抑制するボツリヌストキシンBotulinum toxin等がある.
最近開発されたβ3受容体刺激薬であるベタニスBetanisuやM3受容体遮断薬ベシケアVesicareは、膀胱収縮を積極的に抑制することができるもので、ゆったりとした膀胱を作ることができる特徴がある.膀胱平滑筋にはβアドレナリン受容体が存在し、畜尿期の膀胱弛緩作用に関与する.βアドレナリン受容体には、β1、β2、β3のサブタイプがあり、人間の膀胱の弛緩作用に関与するタイプはβ3受容体である.ベタニスは、このβ3受容体に作用する.
一方、副交感神経の神経終末からアセチルコリンが放出されてM3受容体に作用すると、膀胱の平滑筋を一気に収縮するため、M3阻害剤ベシケアを用いて異常な膀胱収縮を抑制する.ムスカリン受容体(M2, M3)のM3 受容体は平滑筋に存在するムスカリン受容体である.M3受容体にアセチルコリンが結合し、その後の細胞内の情報伝達機構により、陽イオンチャネルが開き、陽イオンが平滑筋細胞内へ流れ込み脱分極が発生する.
ベタニスは膀胱平滑筋のβ3受容体に、ベシケアはM3 受容体に作用して、蓄尿期の膀胱弛緩作用を促進する.
副作用などにより抗コリン薬を使ってもうまくいかないときは、理屈上は交感神経のノルアドレナリンによる抑制が可能となるが、プリン受容体による収縮を抑制する具体的方法は今のところない.そこで、この場合も、鍼灸による治療が効果が期待される.
膀胱収縮に関する疫学的調査結果によると、抗コリン作用は80代になると40代の60%程度に減少する.一方で、プリン作動性は、40代では少ないが、80代では30%程度に増加するため、プリン作動性の膀胱収縮を抑制する薬も必要となる.
治療には漢方薬も使用されており、八味地黄丸、牛車腎気丸、補中益気湯、清心連子飲、小建中湯等が用いられる.
5.2 過活動膀胱の東洋医学的治療
5.2.1 過鍼灸治療効果の評価方法
鍼灸治療の効果を検証するには定量化が必要となる.一般的に知られている評価法に、国際前立腺症状スコアIPSS(International Prostate Symptom Score)がある.メリットは、重症度判定ができることにある.合計スコアが7点以下を軽症、8~19点を中等症、20点以上を重症とする.今回実施した対象は、平均は7点以上、夜間の排尿回数が3回以上とした.
過活動膀胱に対する鍼灸治療の効果の評価方法として、過活動膀胱症状質問票OABSS (OverActive Bladder Symptom Score)が簡便な質問票として使用されている.合計スコアが5点以下を軽症、6~11点を中等症、12点以上を重症とする.膀胱症状質問票の評価の基準は、切迫感スコアが2点以上かつ合計スコアが3点以上の場合に、膀胱症状質問票のスコア数値により判定する.
5.2.2 中髎穴への刺鍼の効果
過活動膀胱に対する中髎穴の鍼治療効果が報告されている[4].尿流動態検査にて過活動性膀胱を呈した男性9名, 女性2名(51歳から82歳, 平均年齢71歳)に左右の中髎穴 (BL-33)に刺鍼を実施した.主訴は切迫性尿失禁9名, 尿意切迫2名.鍼治療前後に自覚症状の評価、尿流動態検査を実施して鍼の効果判定を行った.直径0.3mmのディスポーザブル鍼 を50~60mm刺入し、10分間、手による回旋刺激を行った.鍼治療の回数は4回から12回(平均7回)であった.
自覚症状では、切迫性尿失禁は9名中5名は尿失禁が消失し著明に改善した.2名は尿失禁回数および量が減少し改善を認めた.さらに、尿意切迫感を主訴とした2名の排尿症状は正常化した.自覚症状の改善率は82%であった.治療前の尿流動態検査にて11名全員に認められた無抑制収縮は、治療後6名で消失した.治療前後の比較では、最大膀胱容量と膀胱コンプライアンスに有意な増加が認められ、尿流動態検査でも改善が認められた.ここで、膀胱コンプライアンスは、膀胱の広がりやすさの指標で、最大膀胱容量/内圧(ml/cmH2O)となる.
被験者をさらに増やした検討も行われている[5].過活動膀胱と診断された男性16名、女性4名(平均年齢73歳)に対して、中髎穴 (BL-33)に刺鍼して、膀胱の無抑制収縮、初発尿意、最大膀胱容量、残尿量、尿失禁頻度を調べた.
中髎穴は、第三後仙骨孔部に取穴し、上後腸骨棘と仙骨列孔を結びその線上の中央にとった.鍼の刺入角度は、頭部に向け45°斜刺にて40mm刺入し、鍼が仙骨の後面の骨に沿わせた.中髎穴の得気が、深部で重い感覚となるようにした.刺激は手で180°以内で回旋する旋撚術を10~20分実施した.使用鍼は長さ60mm、直径0.3mm(2寸8番)とした.
膀胱の無抑制収縮は、7名(33%)で消失した.初発尿意は鍼治療後にp<0.05で有意に増加した.最大尿意での最大膀胱容量は113mLから186mLに有意に増加した(p<0.01).残尿量も有意に減少した(p<0.01).尿失禁頻度は、切迫性尿失禁を訴えた14名(70%)において失禁が消失もしくは改善した.
以上の結果から、中髎穴を用いた鍼治療は、過活動性膀胱にともなう切迫性尿失禁と尿意切迫に対して有用であることを示した.
過活動膀胱に対する中髎穴の鍼治療を実施したのちに、過活動膀胱症状質問票OABSSを用いて評価した報告がある.過活動膀胱症状質問票 のスコアと、膀胱の内圧測定の結果について比較した.ここで、膀胱の内圧測定では、膀胱に生理食塩水を入れて、尿意を感じるポイントを測定した.鍼治療を行うと尿意切迫感、排尿回数、膀胱容量の拡大が確認できた.その結果、鍼治療前はQOLにおいて不満が多かったが、治療後は満足度が向上していることが確認されている.
5.2.3 中極穴への温灸治療の効果
中髎穴への鍼治療を実施すると効果があるが、治療を止めると元に戻る.鍼治療の課題は、治療を止めると元に戻ることであり、効果を継続させる場合には少なくとも3週間に一度は鍼治療を実施する必要がある.家庭でも継続的に治療が可能となるセルフケアによる温灸治療の効果に関する報告がある[6].
夜間頻尿に対する温灸治療の有効性を評価するため、対照群として温度が十分に上昇しないシャムsham温灸を用いたランダム化比較試験を実施した.夜間頻尿を有し薬物療法に抵抗性を示す34名の患者を対象とした(男性31名, 女性3名, 平均年齢73歳).泌尿器科の診断では、前立腺肥大症21名, 前立腺癌7名, 神経性膀胱7名, 慢性前立腺炎1名, 前立腺前立腺全摘除術後1名(重複あり)であった.温灸群20名とシャム温灸群16名の2群にランダムに割り付けた.治療は、患者自身が自宅で下腹部の中極穴に1週間毎日3壮施灸した.評価は、温灸群とシャム温灸群で治療前1週間と治療中1週間の平均夜間排尿回数の累積数の変化について比較した.温灸はせんねん灸等を用いており、シャム灸は穴にふたをして、熱が伝わらなくしている.
結果は、1日あたりの平均夜間排尿回数が温灸群では治療前21.6回、治療中16.8回となり、治療前後で有意な減少がみられた(p<0.05).シャム温灸群では治療雨19.9回、治療中18.4回で有意差は認められなかった.有効例は、温灸群で20名中10名(50%)、シャム温灸群では14名中4名(29%)であった.中極穴への温熱刺激により1週間の平均夜間睡眠中排尿回数が減少しており、中極穴への温灸治療は夜間頻尿に対して有効な治療方法の一つになり得ると報告されている.
また、排尿効率に関する報告もある.排尿効率は、尿量測定において、尿量だけでなく、どれくらいの速度でどれくらいの尿量を排出したかという指標である.高齢者は勢いが無く時間がかかり、排尿効率が低い.排尿効率(平均尿量率)は、前立腺肥大症患者においても鍼治療により一旦良くなるが、治療をやめると元に戻る.流量においても同様であった.中極穴への鍼灸治療が期待される分野となる、
5.2.4 三陰交および関連穴への刺鍼の効果
特発性の不安定膀胱症状(頻尿, 尿意切迫感, 切迫性尿失禁)を訴える女性患者20名を対象に鍼治療を行った結果が報告されている[7].刺鍼部位は、三陰交、腎兪、膀胱兪、次髎、命門、関元、気海である.評価として、症状と尿流動態検査を行った.その結果、患者の15名にあたる77%に症状の改善が認められた.改善が認められなかった患者は1名のみであった.症状が改善された患者は、尿流動態検査により、膀胱容量の増大を確認した.鍼治療は安全で、合併症や副作用も無く、特発性不安定膀胱と結び付けられる昼間の症状を持っている患者に対して、非侵襲治療と同様の効果的な治療の提供が可能となる.
過活動膀胱症状(頻尿, 尿意切迫感)を訴える患者15名(男性4名, 女性11名)を対象に刺鍼刺激を行った結果が報告されている[8].第三仙骨神経(S3)の末梢神経領域(後頚骨神経)として、三陰交に刺鍼し、太渓に電気刺激(ストーラー求心性神経刺激, 9V, 20Hz, 30分間)を週4回、合計12回実施した.評価はVAS(Visual Analogue Scale)を用いた.7名(47%)が症状が消失、3名(20%)が症状が改善し、効果がなかったのが5名であった.合計で10名(67%)の過活動膀胱症状が改善された.また、全患者の平均的全膀胱容量は、95mLから133mLに増加した(p=0.00166).昼間の排尿回数は16.1回から8.3回に、夜間の排尿回数は4.4回から1.4回に減少した.以上の結果から、第三仙骨神経の末梢神経領域の神経刺激が過活動膀胱の治療に効果的であった.
切迫性尿失禁を有する患者35名に対して、後頚骨神経刺激(PTNS:20Hz, 30分間)を実施した結果が報告されている[9].後頚骨神経刺激は、週1回、合計12週間実施した.評価は、頻度/量チャートと、I-QoLおよびSF-36質問表を用いた.その結果、22名の患者(63%)に主観的改善が見られた.また、24名の患者(70%)において尿失禁回数が半減あるいはそれ以上の減少を認めた.16名(46%)には、尿失禁の消失が見られ、QOLが著しく改善した.
以上の結果から、 後頚骨神経刺激が切迫性尿失禁を有する患者の治療に、主観的かつ客観的に効果があった.
5.2.5 ランダム比較試験結果
伝統的に膀胱に関連する治療に用いられてきた三陰交穴を使用した鍼治療群と、それ以外の経穴を用いたプラセボ群のランダム化比較試験RCT(Randomized Controlled Trial)の結果が報告されている.
頻尿および尿意切迫感を訴える女性52名を無作為に三陰交穴(SP6)群の26名と足三里穴(ST36)群の26名の2群に分けて鍼刺激を行った結果が報告されてる[10].評価は、症状, 膀胱内圧測定, 肛門括約筋筋電図検査, 尿流動態検査を行い、治療効果を比較した.その結果、三陰交への鍼治療群では22名(85%)の患者に症状の改善が見られた.また、尿流動態検査によって最大膀胱容量の増大が確認された.足三里へのプラセボ群では、効果が認められなかった.以上の結果から、三陰交への鍼刺激が、頻尿および尿意切迫感を訴える患者の治療において、簡単で効果的な方法であると報告している.
無作為抽出された切迫性尿失禁を有する過活動膀胱患者85名を、鍼治療群(三陰交, 委陽, 膀胱兪, 関元)とプラセボ群(風市, 足三里, 風門, 中髎)に分けて調べた結果が報告されている[11].1週間に1回の鍼治療を4週間行った.尿失禁の頻度が鍼治療群で59%減少、プラセボ群で40%減少した.鍼治療群では、頻尿は14%減少、尿意切迫感は30%減少し、膀胱容量も13%増大している.また、QOLに影響を与えるスコアは、鍼治療群で54%、プラセボ群で30%改善した.以上の結果から、膀胱に関連する経穴への鍼治療を受けた女性は、膀胱に関連しない経穴に鍼治療を受けた女性に比べて膀胱容量、尿意切迫感、排尿回数が改善し、QOLが向上した.
このように、ランダム化比較試験においても、膀胱関連穴に鍼治療を実施した鍼治療群と、膀胱とは関連していない経穴に鍼治療を行ったプラセボ群に違いがあったものは、2つの報告に共通するものとして、尿意切迫感と排尿回数であった.
6.考察
中医学で対象にしている排尿障害には、排尿困難である癃閉に関する記載はあるが、過活動膀胱に関する直接的記載はない.これは、過活動膀胱が疾患として重篤でないためと考えられる.一方で、過活動膀胱や尿失禁はQOLを著しく低下するため、症状の緩解が望まれている疾患の一つとなる.特に、特発性の場合は西洋医学におけるメカニズム解明が待たれており、鍼灸に対する期待が高いと考えられる.従って、今回報告されている内容が、経穴学においてどのように位置付けられるかを考察することは重要と考えられる.
過活動膀胱の治療穴として、中髎穴が報告されている.この場合の刺鍼手技は、第三後仙骨孔部に取穴し、上後腸骨棘と仙骨列孔を結びその線上の中央にとるとともに、鍼の刺入角度は、頭部に向け45°斜刺にて40mm刺入し、鍼が仙骨の後面の骨に沿うようにしている.その結果、鍼先部は次髎穴あるいは上髎穴の位置に達する可能性が高い.また、近接部位を走行する小腸兪、膀胱兪も刺激していると考えられる.
仙骨孔に位置する八髎穴は、いずれの経穴も理下焦、健腰腿、強腰膝、補下焦、通経絡の作用があり、婦人科疾患、二陰疾患(尿漏、小便不利、下痢、便秘、痔、陽委、遺精、早漏)、腰痛などを主治としている.八髎穴は二陰疾患として尿漏にも効果があると示されていることから、過活動膀胱への治療効果が考えられる.
小腸兪は小腸の経気が背部に巡り注ぐ所で、小腸の疾患を治す経穴となる.清熱利湿の作用がある.尿漏、小腹脹痛、痢湿、遺精、血尿、遺尿、帯下、腰痛、腰仙部から尾骨にかけての痛みを主治とする.
膀胱兪は、膀胱の経気が背部に巡り注ぐ所で、膀胱の疾患を治す経穴となる.疎通膀胱、清熱利湿の作用がある.頻尿、小便不利、遺尿、泌尿器系疾患、泄瀉、便秘、腰背部の痛み、腰椎部のこわばりや痛みを主治とする.
以上のことから、尿漏に関する経穴は八髎穴と小腸兪があり、頻尿に関する経穴は膀胱穴がある.中髎から刺入した鍼が八髎穴だけでなく小腸兪や膀胱兪を刺激することで、過活動膀胱症状である頻尿・尿意切迫感・尿失禁を軽減していると考えられる.
中極は、体の上下左右の真ん中で、かつ端に位置することを意味している.中に胞宮や精室があり、体の奥深いところにある.膀胱の募穴で、補腎培元、清熱利湿、助陽調経、利膀胱、理下焦、培元気、助気化、補腎調気の作用がある.遺精、陽萎、尿閉、月経不順、崩漏、不妊症、陰部のかゆみを主治としている.温灸による中極施灸による効果が報告されているが、経穴学では頻尿や尿漏として明示的には言及はしていない.
三陰交は、足の太陰脾経、足の厥陰肝経、足の少陰腎経の三経が交会する所であり、足の三陰経が主治とする疾患をすべて網羅する.作用は健脾益気、調補肝腎、補脾胃、助運化、通経活絡、調和気血となる.腹部の脹痛、泄瀉、月経不調、疝気、不妊症、陽委、陰挺、頭痛、失眠、遺精、遺尿、水腫などを主治としている.三陰交穴への鍼刺激による効果が報告されているが、経穴学では頻尿や尿漏として明示的には言及はしていない.
一方で、過活動膀胱は、弁証施治では腎陽虚や脾腎陽虚となると考えられる.腎陽虚の場合は、腎虚の程度が進み、温煦作用の減退による寒証(虚証)が現れたものである.陽虚の体質で、温める力が弱い場合が多い.また、高齢や慢性病による衰弱などで、腎陽が虚して封蔵ができなくなり、その結果、膀胱が水液を制約できず、陰盛陽虚となる夜間に尿が頻数で量が多くなる.また、内分泌機能の低下に基づく同化作用の減弱や循環不良、脳の興奮性低下などによる疾患と考えられる.
腎陽虚の症状は、腎虚や腎気不固以外に、四肢の冷え、腰や腹の冷え、頻尿、夜間頻尿、夜間多尿、尿量過多、排尿後の余瀝、甚だしければ尿失禁あるいは遺尿となる.
腎病証であるため、随伴症状は、耳鳴り、聴力低下、腰背部がだるい、滑精、早漏などがある.舌質は淡胖、舌苔は薄白、脈沈細あるいは無力となる.治法は、温補腎陽で、代表配穴は、三陰交、中極、腎兪、命門、気海、関元、膀胱兪などとなる.
代表方剤は八味丸、右帰飲、四神丸などである.
このように、腎陽虚の場合は過活動膀胱症状である頻尿・尿意切迫感・尿失禁が発生することが知られており、その治療穴として三陰交や中極があることから、三陰交や中極による効果は、単独の経穴としてではなく腎陽虚の緩解を通じて示されていると考えられる.
脾腎陽虚では、腎陽虚の命門火衰により脾陽を温煦できないか、脾陽虚のために腎陽を補うことができず、脾腎の両臓が虚して温摂が不足し、陰盛陽衰の夜間に尿量と回数が増加する.その結果、症状としては夜間の頻尿と尿量増加が現れる.陽虚のため、随伴症状としては、寒がる、四肢の冷え、頭のふらつき、耳鳴り、倦怠無力感、元気がない、膝や腰がだるく無力、食欲不振、泥状から水様状の便あるいは不消化便、頻尿等となる.舌質が淡、舌苔が白、脈は沈あるいは弱となる.治法は、温補脾腎、温陽固渋である.代表配穴は、三陰交、中極、脾兪、腎兪、命門、気海、関元、足三里、膀胱兪などとなる.脾腎陽虚の場合は過活動膀胱症状である夜間頻尿が発生することが知られており、その治療穴として三陰交や中極があることから、三陰交や中極による効果は、単独の経穴としてではなく脾腎陽虚の緩解を通じて示されていると考えられる.
腎陽虚を生ずる原因として脾胃虚弱による脾腎陽虚が示されているが、そこでは脾経および胃経の経穴が取穴されている. 足三里への刺鍼をプラセボ群として、効果が認められなかったという報告があるが、脾腎陽虚が原因の場合は足三里への刺鍼の効果も考えられる.プラセボ群の効果が全くないわけではないのは、このような理由による.従って、プラセボ群を選択する場合は、足の陰経三経絡だけでなく、足陽明胃経に関係する経絡も除外することを検討しなければならない.また、プラセボ群の検討は海外で実施されている.日本特有の経絡治療や手技により足の陽明胃経に刺鍼することで、特有の効果を発揮する可能性も考えられる.
7.むすび
高齢化が進む日本では、過活動膀胱をはじめとする下部尿路機能障害を訴える患者は高齢者を中心に今後急速に増加していくと考えられる.下部尿路機能障害の西洋医学的治療方法は、平滑筋の受容体のメカニズム解明などにより有効な薬剤の開発が進められており、有効性が示されている.
一方で、これらの薬剤は、口渇などの副作用があり、高齢者には投与しにくい場合も存在する.また、特発性疾患があり、西洋医学的治療を適用しにくい事例も存在する.その結果、東洋医学的アプローチへの期待が高まっている.
鍼治療においては中髎穴の効果が、温灸では中極穴での効果が報告されている.三陰交穴への鍼治療においてはランダム比較試験を行って、鍼治療の有効性が確認されている.
経穴学からも中髎穴を含む八髎穴および中髎穴に近接する小腸兪や膀胱兪において、主治として頻尿、夜間頻尿、尿漏が示されており、その効果が古代より明らかにされている.三陰交穴および中極穴は、腎陽虚の治療穴として説明できる.今後は腎陽虚の原因の一つとなる脾腎陽虚の治療穴として足の陽明胃経の経穴の効果の確認も必要と思われる.
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(平成27年3月30日受付)
大塚 信之
1985年 東北大学卒業
1987年 東北大学院博士前期課程終了
1997年 博士(東北大学)
1999年 蛍東洋医学研究所設立
2014年 明治東洋医学院専門学校在籍
漢方、鍼灸、気功など、東洋医学に関する研究に従事
所属 Affiliation
蛍東洋医学研究所, 大塚鍼灸院
Hotal Ancient Medicine Research Institute (HARI), Otsuka Clinic
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