蛍東洋医学論文誌 JHTOM 050101
Vol. 5, No. 1, 2018
0.5M
不妊症への鍼灸の適用
Acupuncture and Moxibustion Therapy for Infertility
大塚 信之 所属 住所
Nobuyuki Otsuka Affiliation Address
あらまし
不妊治療は、西洋医学だけでなく、東洋医学においても幅広く検討されており、甲乙経や鍼灸重宝記にも記載がある. 不妊症は多くの原因が考えられており、様々に分類されるとともに未婚率上昇や高齢出産など社会的要因にも影響される. 不妊治療では、妊娠に向けて、卵子の質の向上・卵胞の発育促進・免疫学的寛容の獲得・子宮内膜の養生と血流の増加を図るとともに、妊娠維持に向けて、 胎盤新生血管の質の向上・妊娠高血圧の予防・卵巣機能向上による黄体機能維持・血流循環の改善が重要となる. 星状神経節、卵巣動脈、寛骨閉鎖孔、志室、胞肓、陰部神経叢、中髎穴への鍼灸治療により、妊娠率の向上が期待される. 治療穴としては、三陰交、陰陵泉、血海、腎兪、志室、中髎への置鍼、低周波置鍼療法、直線偏光近赤外線照射等が有効とされる. 妊娠の維持にはパイオネクス貼付が、血流改善には温灸が期待される.不妊女性の精神的ストレスに対する鍼灸治療として、マイナートラブルの解消も期待される. 東洋医学では一人一人の患者に合わせた治療を行っており、患者の状態を詳細に把握することで、不妊治療への適合性は高いと考えられる. 適合性のさらなる向上には、効果の高い治療方法の選択が必須となる.
キーワード 不妊症, 卵子, 子宮内膜, 低周波置鍼療法, 直線偏光近赤外線, 東洋医学, 鍼灸治療
1.はじめに
不妊症(Infertility)は、特定の期間において正常な性生活にもかかわらず妊娠しないことを指す.期間は、結婚後3年(日本)、2年(国際産婦人科学会)、1年(アメリカ不妊学会)と様々な基準がある.また、年齢を考慮して決めるべきで、30歳以上は2年、35歳以上は1年が妥当とされる.一度も妊娠したことがない場合を原発性不妊症とし、一度以上妊娠して以降不妊となる場合を続発性不妊症と呼ぶ.また、通常の検査として、基礎体温、子宮卵管造影、超音波断層法、血中プロラクチン、腫瘍マーカーCA125(Cancer Antigen)値、精子、腹腔鏡検査などによっても異常が認められない場合を原因不明不妊症という [1].
不妊治療には、西洋医学だけでなく、東洋医学においても幅広く検討されている.甲乙経には、水血がときどきあって妊娠しないものに然谷を用いるとする [2].鍼灸重宝記は、子なき(不妊症)は三丘、中極.又は、腎兪、命門とする.胎落ち(流産)やすきは、神闕に灸す、永く落ちず、とする [3].子宮の発育不全、位置異常、冷え症その他体質的異常によるものは、鍼灸治療によって改善されて妊娠することがあるとし、治療点は、鍼と灸ともに、腎兪、小腸兪、上髎または胞肓、中脘、気海または大巨、三里、太谿とする.腎兪と小腸兪は置鍼を行うとよいとする [2].中条流灸法では、鼻中隔下際と口角との三角形を作り、その頂点を臍に当てて下際両隅に30壮施灸し、2ヵ月から6ヵ月続けるとする [4].
2.生殖について
生物の生殖について概要を示す.ボルボックス (Volvox) は、減数分裂を初めて実施した細胞と言われる.群体を形成する緑藻の一種で、ボルボックス属に属し、和名はオオヒゲマワリ.植物だが、鞭毛で動く.進化の過程で生殖が目指したものは死からの逃避であった.ゾウリムシは、通常は減数分裂して4分の1となり遺伝子を交換するが、餌となる植物が足りなくなると生殖を経ないで分裂するオートガミー(Autogamy)を起こす.生殖細胞の分裂回数は無限だが、体細胞は約50回分裂すると分裂は止まり、ヘイブリック限界と呼ばれる.ヒトの平均寿命が高くなり100歳以上の人数が増えても最高齢は頭打ちとなっているのは心筋細胞の寿命が120年であることと関係がある.羊のドリーが早く死んだ理由も、クローニングに使用する乳腺細胞が分裂回数を重ねているので、ヘイブリック限界で寿命に限界が来たためと言われている.癌にはヘイブリック限界は無いとされるが、DNA(DeoxyriboNucleic Acid)の末端に存在するテロメアが分裂により短くなってゆき、アポトーシス抑制遺伝子まで短くなると、アポトーシスという突然死になる.また、癌は2mmを超えると、血管の存在なくして存在できない.従って、血管の存在が重要となる.胎児では、2週間後に心臓が形成されるが、2mm以上になり基底膜に接した血管の細胞がアポトーシスを起こすため、生殖率を上げるには胎盤の血流確保が重要となる.
3. 不妊症の概要
3.1 不妊症の分類
不妊症の分類を以下に示す [1].
1. 膣性不妊:膣形成異常、膣頸
2. 機能性の卵巣性不妊:卵巣無形成、早期閉経、視床下部―下垂体機能低下、多嚢胞性卵巣症候群(PCO: Polycystic Ovary Syndrome)あるいは多卵胞症候群(PFO: Polyfollicular Ovary Syndrome)による機能性無排卵となる無月経
3. 器質性の卵巣性不妊:腫瘍、両側卵巣摘出、放射線照射、抗がん剤、子宮内膜症による器質性無排卵による無月経
4. 卵管性不妊:機能性の卵管収縮異常で、炎症、癒着、子宮内膜症、摘出、結紮など器質性のもの
5. 子宮性不妊:頸管性粘液異常など機能的なものと、奇形、腫瘍、腺筋症、異物、内膜癒着など器質的なもの
6. 骨盤腔内不妊:子宮内膜症、炎症性癒着、腫瘍、手術後癒着など
7. 男性不妊:精路障害、射精能障害、性交不能など
8. 原因不明:原因不明不妊症は約30%を占める.外陰、膣、子宮、卵管、卵巣などの異常だけでなく、脂肪過多症、糖尿病、萎黄病などの全身症やヒステリー、不感症なども原因となる.
3.2 不妊症の医学的原因
妊娠過程からみた女性の不妊の原因は、排卵の有無、卵の卵管采への吸引の有無、卵子と精子の受精の有無、卵管閉塞や卵管狭窄の有無、胚盤胞が子宮に来た時の子宮の状態、子宮での胚盤胞の生育状況など、多岐にわたる.女性に抗精子抗体があると、精子を遮断するために不妊となる場合もある.女性の生理周期によって卵胞刺激ホルモン(FSH: Follicle stimulating hormone)や黄体形成ホルモン(LH: Luteinizing hormone)が変動し、卵胞が成長するとともに、基礎体温が変化する.基礎体温は、無月経に近く、高温期がなく、不安定でも、その後妊娠する場合があり、精子と卵子の質が良ければ妊娠は可能となる.
男性は、精子がテストステロンだけでなく、女性ホルモンのFSHやLHが精巣に作用して精子が作成される.射精される精子は70日前に製造される.男性の不妊の主な原因は、精子数の減少にある.精子数は、1930年代には1.2億個/mℓあったが、1990年代には0.7億個/mℓに減少した.20歳の男性の精巣重量は、1920年生まれでは20g程度あったが、1980年生まれでは18gに低下した.また、精巣重量は25歳の20gをピークに、60歳では13gに減少する.日々の精子量は大きく変動しており、一回の検査で悲観的になることはない.精子の少ない日だと妊娠しにくいので性交は数日間必要となる.精子の活性度の低下も不妊の原因となるが、活性度の観察は難しく、60歳でも妊娠可能な男性がいる一方で、妊娠させることができない男性も存在する.
3.3 不妊の社会的要因
不妊の社会的な要因は、生殖率の低下と未婚率の上昇がある.生殖率は、犬は70%だが、ヒトは45%しかない.ヒトの生殖率の低さは、さかりの消失、排卵期の隠蔽、生殖可能期間である15歳から40歳までの25年間より短い生殖期間の人為的設定、性交当たりの妊娠率の低下、夫婦形態の画一化などがある.未婚率が高まり、子供がいない人の割合はベビーブームのころは25歳で30%程度だったが、現代では30歳代でも70%程度となる.
35歳以上の高齢出産が増加しており、女性の高学歴化や就労率の増加などのライフスタイルの変化に伴う晩婚化や晩産化と、それを支える生殖補助医療の進歩による.母体の年齢階層別出生率の推移は、20歳代で減少し、30歳代後半と40歳代が増加している.出生率の低下の中で、高齢出産の割合は急速に増加しており、2014年の35歳から39歳および40歳以上の母親の割合はそれぞれ22.5%と4.9%であり、45歳から49歳の母親の出生数は1200人、50歳以上でも58人に達する.また、2014年の総出生数100万人に対して、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療による出生は39万人となり、3.9%と増加している [5].
3.4 不妊症の検査
妊娠鑑別検査は、色法、基礎体温(BBT: Basal Body Temperature)、血中ホルモン [FSH, LH, エストラジオール(E2: Estradiol), テストステロン(T: Testosterone), プロラクチン(PRL: Prolactin), 甲状腺刺激ホルモン(TSH: Thyroid Stimulating Hormone)] 、子宮卵管造影(HSG: HysteroSalpingoGraphy)、頸管粘液、精子検査が行われる.最終的には、腹腔鏡検査が必要となる.
4.不妊症の治療
4.1 不妊治療の留意点
不妊治療は、治療期間が5年から10年に及ぶこともあり、治療が不成功に終わったときの落胆は大きい.長期化により検査や治療に伴う苦痛のほかに、経済的負担や周囲からの精神的圧力もストレス要因となるので、患者が自分の気持ちのコントロールができるように援助する必要がある.また、適切な性交技術に関する知識を提供するとともに、夫婦の悲嘆を十分聞き、お互いが非難しあうことを避けるように指導する必要がある.コーピングの能力が低下しないように、協力的な態度で問題解決するように取り組むよう支援するとともに、患者との信頼関係を築き、心の交流を図る必要がある.特に、不妊症患者は、妊娠できないことへの焦躁感や罪悪感、失望感など、精神的ストレス状態に置かれていることに十分留意する必要がある.
4.2 不妊治療の概要
不妊治療は、最初に一般不妊治療があり、その後に高度不妊治療がある.
一般不妊治療には、タイミング法と人工授精がある.タイミング法は、妊娠しやすい排卵日の2日前から排卵日までに性交のタイミングを合わせる.6回以上で妊娠しなければ、その後の妊娠率は停滞するため目安は6回となる.人工授精は、採取した精液中から動きのよい精子である運動良好精子を取り出して濃縮し、妊娠しやすいタイミングで子宮内に直接注入する.妊娠成立のプロセスは自然妊娠と同じで、人工授精で妊娠する確率は1回あたり約10%で、費用は2万円から3万円となる.一般不妊治療には、内服薬や注射による排卵誘発薬で卵巣を刺激して排卵を起こさせる薬物療法や、子宮内膜症などに対する外科療法も含まれる [6].
高度生殖医療(ART: Assisted Reproductive Technology)は、卵巣から卵子を取り出す採卵と、体外で精子と受精させて数日後に受精卵を子宮に戻す胚移植がある.受精の方法は体外受精と顕微授精となる.体外受精は、卵子と精子を同じ培養液の中で培養して受精させ、得られた受精卵を子宮に戻す.顕微授精は、動きがよく形の正常な1個の精子を卵子の中に細い針で注入する方法で、卵細胞質内精子注入法(ICSI:IntraCytoplasmic Sperm Injection)が一般的に行われる.受精障害や重症精子減少症、重症精子無力症など体外受精では受精が起こらない可能性が高い場合に実施する.
高度生殖医療による出産の確率は総治療あたり平均12%となる.年齢で異なり、32歳程度までは約20%で、年齢とともに下降して40歳を過ぎると7〜8%となる.費用は、いずれも30万円から60万円 [7].
5.鍼灸による不妊治療治療
妊娠に向けて、卵子の質の向上、卵胞の発育促進、免疫学的寛容(トレランス)の獲得、子宮内膜の養生と子宮内膜血流の増加が必要となる.また、着床の補助や妊娠維持に向けて、胎盤新生血管の質の向上、妊娠高血圧の予防、卵巣機能向上による黄体機能維持、血流循環の改善が必要となる.以下に、鍼灸治療例を示す.
5.1 文献による臨床報告 [8, 9]
1. 主穴:関元、中極、三陰交、血海.配穴:気海、百会、腎兪、志室、八髎、足三里、陰陵泉
2. 主穴:関元、中極.配穴:足三里、三陰交(いずれも灸)
3. a. 関元、陰交(鍼後に灸).b. 関元、中極、足三里、三陰交(鍼後に灸)
4. 三陰交、関元(又は子宮)、天枢
5. 主穴:関元、中極、神闕、命門、三陰交 配穴:気海、膏肓、肝兪、腎兪、足三里 毎日3から5個の経穴を選び温灸を10から20分、毎日か隔日実施.
6. 絶孕、気門、子宮、太陰蹻
7. イオンパンピング療法:内関-公孫、後渓-中脈
8. 耳鍼:子宮、卵巣、皮質下、神門、副腎、腎、内分泌
文献に記載された使用穴として、報告例の多いものから順に経穴が列挙されている.
古典12例:中極、関元、湧泉、然谷、気衝、命門、腎兪、胃兪、商丘、水道
現代30例:腎兪、中極、気海、上髎、中脘、命門、次髎、三陰交、大巨、足三里
5.2 卵子の質の向上
原始卵胞は出生時は70万個あるが、20歳で16万個に、40歳代以降は1万個に減少する.卵子は排卵の120日前から準備に入り、成長する.生理開始後14日目頃に排卵する.排卵で使用するのは500個から1000個程度であるが、40代では300個程度になる.排卵直前の生理の頃に20個程度となり、排卵時には1個になる.準備段階にホルモンを抗ミュラー管ホルモン(AMH: Anti-Mullerian Hormone)を出す.AMHが多いほど、卵巣年齢が若く、卵巣予備能を求めることができる.鍼灸治療によりAMHが良化しており、卵巣の血流の上昇で卵胞の減少が緩やかになり、卵子の数が多くなって、体外受精の確率が上ると言われている.鍼灸治療による月経周期の改善の報告がある [10].また、無排卵周期症の治療として、三陰交と足三里に2Hzで30分間、中髎と腎兪に2Hzで15分間の鍼通電療法、足部と三陰交に棒灸や赤外線を用いた報告がある [11].
5.3 卵胞の発育促進
卵子の老化は加齢により進行し、細胞分裂時に染色体異常が起こる.通常の染色体は46本だが、47本や48本になる数の異常が起きる.ダウン症は21番目の染色体が3本になるが、21番目は人の生存に関して重要ではないため、染色体異常があっても出産される.染色体そのものの異常は妊婦の年齢とは関係ないとされているが、紡錘体形成時の異常は35歳以上で顕著となり、35歳以下の7倍に増加し、染色体の数の異常は2倍に増加する.また、32歳以上では、アポトーシスにより卵子のミトコンドリア数が減少する.ミトコンドリアは好気性菌で、感情DNAを保有し、自活するために100種類程度の蛋白質を取り込む.減数分裂期の染色体の分配には、コヒーシンタンパク質複合体が必要となるが、卵子の染色体分配異常はこのコヒーシンの欠乏によると言われている.糖転化によるブドウ糖減少に伴い、卵子の損傷が進行する.卵子は、卵丘細胞からギャップ結合を介して送られるグルコース代謝物にエネルギー生産を依存している.卵子に栄養を送るには、顆粒膜細胞がギャップ結合を通じて物質輸送を能動的に行う.一方で、分子量が1000以下のブドウ糖はギャップ結合を通り抜けることができる.卵巣の血流状態を上げることで卵胞に栄養を送ることができ、卵胞の発育を促進する育卵が可能となる.
鍼灸による育卵治療は、卵子の成長時に実施することが重要となる.卵子は受精してから排卵胞になる間に0.03mmから0.14mmに膨張する.鍼灸治療により卵子の状態が改善するという報告がある [13].肉眼では良好胚と思われても卵細胞の栄養が少ないものが明らかとなり、栄養が多い卵子の育成が可能となった.卵細胞の栄養状態の改善には腹部内臓血管を拡張する必要がある.
卵巣は体表から深さ8cmにあり、刺鍼の手技では難しいため、直線偏光近赤外線が用いられる.直線偏光近赤外線を体内に深く照射することで、血流を増加して、育卵が可能となる.直線偏光近赤外線の照射部位は、星状神経節、卵巣動脈、卵巣固有索、子宮底、子宮動脈、腹大動脈分岐部、寛骨閉鎖孔、陰部神経叢など複数あり、期間によって使い分ける.直線偏光近赤外線を照射する機器としては、スーパーライザ―等があり、不妊治療だけでなく鍼灸治療に使用した場合の有効性が報告されている [14].
超音波照射も実施されており、卵巣部分の深さである7cmから9cmのみ集中的に超音波振動を与える.数ミクロンの気泡を内部に反覆して発生し消滅させることで、細胞膜の透過性を向上する.卵子の容積が100倍以上に増加する育卵過程で、顆粒膜細胞との間のギャップ結合の物質輸送を円滑化し、卵子への栄養供給を促す.ミクロマッサージと呼ばれ、1台100万円するが有意差はまだ示されていない.
5.4 子宮の状態の改善
子宮の神経性調節に関する研究により、子宮の平滑筋や血流が自律神経の働きによって大きく変化するとともに、皮膚に加えた体性感覚刺激が自律神経を介して子宮の動きや血流を調節することが示された [12].
子宮内膜症は、子宮内膜組織が子宮内膜以外で増殖する.子宮内では、子宮内膜が卵胞期に増殖して生理の時に脱落するが、子宮外では脱落するところがないため、蓄積される.症状が軽度でも、卵子を傷つけて受精能力を落とし、自然妊娠が困難となる.子宮内膜症の治療は、生理を止めてエストロゲンによる内膜組織の増殖を抑止するか、内膜組織がマクロファージで貪食されるのを待つか、妊娠するかのいずれかとなる.子宮内膜の養生には中髎穴刺鍼が期待される.
一般的な妊娠期間は40週(280日間)なので、20歳代で妊娠すれば、2年間生理が止まり、その間は子宮内膜症が止まる.一方で、20歳代に妊娠しなかった人は子宮内膜症が進み、40歳代では妊娠できない場合がある.子宮内膜症は、出産経験のない人ほど早くから起こることが知られており、晩婚化により子宮内膜増殖症が増加したと考えられる.
マクロファージによる内膜組織の貪食に関しては、刺鍼により組織に損傷を与えることで、サイトカインが提示され、マクロファージなどの免疫細胞が集まると考えられている.
5.5 染色体異常の改善
体外受精時に、37歳から39歳の患者の卵子の染色体異常を調べたところ、全員が染色体異常を示したという報告がある.このような受精卵の場合、子宮に戻しても妊娠しないか流産する.出産経験のある方の50%は流産を経験しているため、1回程度の流産では染色体異常の検査を実施しない.流産が3回目程度で原因解明のために染色体検査を実施する.費用は10万円程度となる.周囲の透明体に卵子が収まっているか、完全に出ているか判定される.検査後に、異常のある染色体に関する検査結果が送付される.
鍼灸治療の一環として、星状節(SG: Stellate Ganglia)に直線偏光近赤外線を照射することで、胚盤確率が70%に上昇した [15].自律神経の調整による低反応性卵巣に対する効果が証明され、高齢不妊治療に必要になった.胚盤確率の上昇の理由は、染色体異常のない卵子が増えたためと考えられている.過去に4回流産した患者の染色体異常の治療例の報告では、8個のうち3個の卵は染色体異常がなかったとされる.
一方で、鍼灸治療により胎児の先天性疾患が発症することは医学的には考えにくいが、特に器官臨界期に時期が重なる妊娠悪阻に鍼灸治療を行う際には、何も行わなくても先天性疾患が発症する可能性が誰にでも3から4%あることを事前によく説明しておく必要がある [5].
5.6 着床率の改善
ジョン ロックとアーサー ハーティグは、1938年頃に16年かけて子宮癌の211人から子宮を摘出して、34個の受精胚を回収した.正常胚は21個で、異常胚は13個であった.その結果、妊娠時期と着床時期が分かり、受精後5日程度で子宮に着床することが分かった.
1982年頃にアレン ウイルコックスは、221人から朝一番に採尿した29000検体に対してhCGを用いて検査を行い、流産と妊娠時期について検査を行った.その結果、31%が流産しており、生理1日前の性交により妊娠率が25%と最高になることが分かった.精子の速度は1分間に6mm程度であるため、受精の場となる卵管膨大部まで精子は30分で到達する.卵子の寿命は6時間から24時間だが、精子の寿命は3日から4日あるため、精子は頭部を卵管に入れて卵管膨大部で待機させればよい.精子は先体反応によりヒアルロン酸を出して卵子の保護膜を溶かし、受精する.受精後、受精卵は3日から4日で子宮に着床する.以上のことことから、排卵日前日の性交が受精率を改善することが分かった.
自然妊娠と人工授精の共通点は、胚盤胞が必要になることにある.胚盤胞の着床率が上がらなければ、自然妊娠率は上がらない.初期胚移植は着床率が低いため、胚盤胞の移植が望ましい.初期胚から胚盤胞までの培養過程のストレスに耐える卵子の育成が重要となる.着床率の改善には、卵子の質を上げる必要があり、3ヵ月間の治療が必要となる.鍼灸治療による胚盤胞の着床率の改善は、40歳以下では有意差が示されたが、40歳以上はデータは少なく、有意差は示されていない.妊娠までの期間は、1ヵ月目が16人、2か月目が10人と減少するが、3か月目が15人と二峰性を示した [15].
高度生殖医療ARTでは、43歳の患者が8回目のARTで9個の胚盤胞を確保し妊娠に成功した.43歳と45歳の患者も妊娠に成功した.治療期間は3ヵ月から4ヵ月必要となる.抗ミュラー管ホルモンAMHが上昇しており、鍼灸治療で卵巣の血液循環が改善して、閉鎖卵胞が復活したと考えられている [16].ART患者の子宮、血海、三陰交への鍼灸治療により、妊娠に成功した報告もある [17].
5.7 卵巣動脈の血流改善
基礎体温だけでは60%程度は排卵日が前後にずれる.腹部が冷えていても、卵巣の温度が低いとは限らない.東洋医学だけでは不妊治療は困難であり、妊娠の過程や阻害要因を把握する必要がある.卵巣動脈は卵巣の内側から入るので卵巣皮質に分類され、子宮動脈は卵巣の髄質に分類される.卵巣への血流は、子宮動脈より卵巣動脈の寄与が大きいが、いずれの動脈の血流を遮断しても排卵数が減少することが分かっている.一方で、下腹神経と骨盤神経を遮断したラットを用いて子宮血流量変動を計測した結果、中髎穴への刺鍼により子宮動脈の血流抵抗指数 (RI) の改善が報告されている.血管作動性腸ペプチド(VIP: Vasoactive Intestinal Peptide)作動性神経は、特定の原子細胞に分布しており、卵胞成熟の初期段階での選択過程に関与しており、VIPが血管拡張作用を持つことが知られている.ヒトでは、下肢のパルス刺激による卵巣動脈の血流改善を目的に、陰陵泉や三陰交に低周波置鍼療法(LFEA: Low Frequency Electrical Acupuneture)を実施した結果、卵巣動脈の閉鎖が抑制されて、血管新生に効果が示されたという報告がある.また、40歳以上でATRを7回と16回実施した患者に対して、星状神経節と卵巣動脈の両方に直線偏光近赤外線を照射することで、複数の胚盤胞を採取して妊娠を実現している.その際、伏臥位にて胞肓と白環兪の間から寛骨閉鎖孔を通して照射した.温灸による卵巣動脈、固有卵巣索、子宮底での血流改善も期待される[15].
不妊症と冷え症状の関係も検討された.鍼灸治療により、不妊症患者の血管運動神経障害などによる冷え症上の改善が効果的であることが示された [18].
5.8 ストレスの改善
不妊女性の精神的ストレスに対する鍼灸治療の有用性も報告されている.不安・抑うつ・気分変調などの評価として日本語版 Profiloef Mood State(POMS)を用いた結果、緊張・不安、抑うつ・落ち込み、怒り・敵意、混乱、TMD の5 項目で鍼治療前よりも鍼治療後で得点が有意に低し、改善が確認された.不安の評価には一般的に使用されるStatetrait anxiety inventory(STAI)を用いた結果、状態不安と特性不安がともに鍼治療前よりも鍼治療後に得点が有意に低下し、改善した.鍼治療3ヵ月後の化学的妊娠率は9.4 %(3/32)、流産率は0%(0/3)であった [19].鍼灸治療により、生理痛、子宮筋腫、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜症に伴うマイナートラブル対応も期待される.
6.鍼灸治療の実際
不妊治療の一例を説明する [15].
6.1 女性への一般的な不妊治療
[仰臥位]
1. 子宮動脈に直線偏光近赤外線を5分間照射
2. 照射中に、三陰交、陰陵泉か地機、血海、足三里に置鍼
3. 中極、帰来、膻中、湧泉に電子温灸、足元にシーツかける
4. 曲池、百会に置鍼
5. 三陰交と陰陵泉に置鍼し、心拍よりやや遅い程度でLFEA(約1Hz)
6. 中脘、関元、水道に単刺
7. 卵巣動脈に、上前腸骨棘付近から直線偏光近赤外線を1分間照射、照射プローブは広目を使用
8. 電気鍼のケーブルをはずし、血海、足三里、三陰交、陰陵泉の抜針、百会と曲池の抜鍼
[伏臥位]
1. 腎兪、志室、督脈上に置鍼して、旋撚刺法と雀啄法を各2回
2. 大腸兪、胞肓、中髎に置鍼した上で電子温灸
3. 中髎と腰眼に置鍼してLFEA(3Hz)
4. 骨盤の後ろから閉鎖孔を通じて直線偏光近赤外線を骨盤内に照射
5. 胞肓から卵巣に直線偏光近赤外線を照射
ここで、LFEAの強度は、痛いと感じる直前まで上げる.下肢へのLFEAおよび志室の刺鍼時の深度は筋膜までで筋層に入らないようにする.ただし、鍼が動かない深さとする.大腿骨後面に走行している大腰筋にLFEAで律動を与える.電子温灸はケーブルを体の上で交差させて滑り落ちないようにする.
直線偏光近赤外線は、大腰筋や腸骨筋に照射して骨盤内の血流を改善する.照射深度は7cmから8cm程度.直接深くまで到達するので、体深部の血流が改善される.
超音波治療では、深さ8cmの卵巣に向けて振動を与えて、代謝を上げる.運動器疾患系とは異なる方法となる.端子を皮膚に圧着させると動作し、皮膚についてないと超音波は出ない.左側に5分間、その後右側に5分間照射する.胚盤胞が採取できなかった45歳の患者では、胚盤胞が採取できるようになった.
血海の代わりに箕門を用いる場合がある.胃食道逆流症(GERD: Gastroesophageal Reflux Disease)の患者には、足三里を省く.腰眼は50mmの鍼を根元まで刺鍼する.チョコレート嚢腫などの疼痛や卵巣手術後の卵巣付近の疼痛の緩和には志室を用いる.腰部痛付近への刺鍼も効果があり、内臓体性反射によると考えられる.陰部神経への刺激もよい.
卵巣で男性ホルモンが大量に生成されて排卵が抑制される多嚢胞性卵巣症候群PCOでは、採卵数の増加が認められた.陰陵泉や地機への刺鍼は、生理不順にも効果がある.卵胞計測の緻密さが必要なので、卵が20mmまで大きくなるまで実施する.子宮内膜症の場合は、軽度だとそのまま実施するが、重度なら産婦人科で外科的手術を勧める.
6.2 体外受精手術直前の不妊治療
不胚移植による体外受精手術直前の生理の頃の不妊治療を示す.
[仰臥位]
1. 星状神経に直線偏光近赤外線を7分間照射
2. 照射中に三陰交、陰陵泉、足三里、血海に置鍼
3. 神闕に電子温灸、温度は43℃程度
4. 湧泉、曲池、百会に置鍼
5. 三陰交と陰陵泉に置鍼してLFEA (1Hz)、痛いところで止める
6. 三陰交と腰兪にパイオネクス1.2mmを貼付、胚移植直前から実施
[伏臥位]
1. 肝兪、膈関、志室、腎兪、命門、大腸兪、次髎、肩外兪に置鍼
2. 腎兪と大腸兪、次髎と志室にに置鍼してLFEA
3. 胞肓から卵巣に直線偏光近赤外線を照射
ここで、三陰交と陰陵泉へのLFEAは、卵巣動脈を拡張して血流を改善することを目的とする. パイオネクスは、着床の補助や妊娠の維持が期待される.
胚移植後には、腹大動脈の分岐部前に場所を変更して直線偏光近赤外線を10分間照射すると共に、半日毎に1個お腹に太陽灸を張る.
6.3 男性への一般的な不妊治療
男性の精子減少症による不妊に対する鍼灸治療も報告されている [20].男性不妊の時は、直線偏光近赤外線を照射する場所が異なり、睾丸は温めてはいけない.男性側に問題がある不妊は、4組のうち2組で妊娠したという報告がある.精子が少ないため体外受精を3回経験した男性を治療して自然妊娠できた場合もある.
7.考察
不妊治療患者あるいは妊婦に対する鍼灸治療が安全であるとともに効果的であることを西洋医学の知見に基づいて明らかにすることが重要と考える.東洋医学では、脈診や舌診があるが、ホルモン、自律神経、免疫等が分かっていない時代に体系化された.その結果、東洋医学で示されている、妊娠中に三陰交に鍼や灸をしてはいけないという状況からは変化している.現在は、妊娠中に三陰交に鍼灸治療をしても、流産はしないと言われている.流産を経験した患者に三陰交のパルス刺激を実施したが流産しなかったという報告もある.安定期の妊婦に対して、安産の灸として三陰交への施灸を推奨する場合もある.不妊治療患者や妊婦に対する鍼灸治療の効果を明らかにするには、東洋医学の研究者間の議論を促進するとともに、鍼灸を医術でなく医学にするための理論の構築が必要となる.また、構築した理論の検証には再現性も重要となるため、西洋医学も含めた統合医療としての検証が必要となる.
不妊の原因は多岐にわたり、全て病態が異なるため、同一の治療では効果が上がらない.例えば、人工授精の場合には流産の概念がむずかしく、結果的に育成されない卵子を子宮に入れる場合があり、その結果、流産率が上がる可能性がある.東洋医学では一人一人の患者に合わせた治療を行っており、患者の状態を詳細に把握することで、不妊治療への適合性は高いと考えられる.適合性のさらなる向上には、効果の高い治療方法の選択が必須となる.
また、今回の報告では妊娠を目標とした鍼灸治療を記載したが、出産に向けては妊娠継続が重要となる.妊娠維持には卵巣からのホルモンが作用するため、妊娠後も卵巣等への治療は重要と考える.
一方で、鍼灸治療で対応できない疾患の明確化も重要となる.例えば、卵管閉塞は鍼灸では治療できない.また、産婦人科で逆子と言われても、3分の1は逆子ではない場合がある.逆子でなければ鍼灸治療をする必要がないため、超音波撮像技術を導入して検査精度を向上する必要がある.鍼灸治療の効果が上がる場合は出産に向けて尽力する必要があるが、問診精度や検査精度の改善で、不適合症例や治療が不要な症例への鍼灸治療を控える必要がある.
治療効果を確認する観点から、妊娠率が重要となる.妊娠率が高いと患者の滞留を防止でき、新患の治療が可能となるが、妊娠率が低いと新患を受け付けることができないため妊娠率が低下する。問診の精度や治療技術を上げて70%程度を目標に妊娠率を上げる必要がある.
治療費が高い場合には継続率が下がり、データが不足して結果に結び付きにくく、患者が減少するという悪循環が起きると考えられる.3ヵ月以上継続した鍼灸治療を目標とするのであれば、常識的な治療費設定が必要と感じた.
8.むすび
不妊治療は、西洋医学だけでなく、東洋医学においても幅広く検討されており、甲乙経や鍼灸重宝記にも記載がある.不妊症は多くの原因が考えられ、機能性や器質性の観点から様々に分類される.女性だけでなく男性に原因がある場合も増えている.生殖率の低下や未婚率の上昇、高齢出産など社会的要因にも影響される.
妊娠に向けた課題は、卵子の質の向上、卵胞の発育促進、免疫学的寛容の獲得、子宮内膜の養生と子宮内膜血流の増加があり、着床の補助や妊娠維持に向けた課題は、胎盤新生血管の質の向上、妊娠高血圧の予防、卵巣機能向上による黄体機能維持、血流循環の改善が挙げられる.
卵子の質の向上と卵胞の発育促進には、星状神経節、卵巣動脈、寛骨閉鎖孔、志室、胞肓、陰部神経叢への直線偏光近赤外線照射が期待され、志室、胞肓、陰部神経叢へは刺鍼も可能となる.治療穴としては、三陰交、陰陵泉、血海、および腎兪、志室、中髎への置鍼やLFEAが有効とされる.卵巣動脈の血流改善や子宮内膜の養生には中髎穴刺鍼が期待され、着床の補助や妊娠の維持にはパイオネクス貼付が期待される.温灸による卵巣動脈、固有卵巣索、子宮底での血流改善も期待される.不妊女性の精神的ストレスに対する鍼灸治療として、生理痛、子宮筋腫、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜症に伴うマイナートラブルの解消も期待される.東洋医学では一人一人の患者に合わせた治療を行っており、患者の状態を詳細に把握することで、不妊治療への適合性は高いと考えられる.適合性のさらなる向上には、効果の高い治療方法の選択が必須となる.
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(平成31年2月4日受付)
大塚 信之
1985年 東北大学卒業
1987年 東北大学院博士前期課程終了
1997年 博士(東北大学)
1999年 蛍東洋医学研究所設立
2017年 明治東洋医学院専門学校卒業
漢方、鍼灸、気功など、東洋医学に関する研究に従事
所属 Affiliation
蛍東洋医学研究所, 大塚鍼灸院
Hotal Ancient Medicine Research Institute (HARI), Otsuka Clinic
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