蛍東洋医学論文誌 JHTOM

Vol. 11, No. 1, 2024PDF  3.7M
鼠径ヘルニアへの鍼灸の適用
Acupuncture and Moxibustion Therapy for Inguinal Hernia

大塚 信之 所属住所
Nobuyuki Otsuka AffiliationAddress

あらまし

鼠径ヘルニアは外科手術が唯一の治療法とされている.そこで、鼠径ヘルニアに対して鍼灸治療を行い、鼠径ヘルニアに対する鍼灸治療効果を明らかにすることを目的とした.鼠径ヘルニアで生じた右鼠径部の膨隆部の高さを定量的に測定して、膨隆量の減少を目指した.
54歳、男性.X年6月8日に右鼠径部の膨隆に気付き、総合病院の外科にて鼠径ヘルニアと診断された.患部は、立位において右鼠径部に膨隆があり、仰臥位では膨隆及び硬結は消失したため、狐疝とした.臓腑弁証は肝虚証とした.
本治法として左曲泉等に刺鍼し、標治法として右商丘、大巨、右外関、左足臨泣に半米粒大透熱灸を五壮から九壮実施した.左太衝や右気衝や右帰来に灸点を適宜追加した.治療頻度は週6回を基本として、6か月継続した.
膨隆部を含む下腹部の写真を週1回程度で撮影し、写真の画像から左側同一部位を基準として、右側膨隆部の高さの差を膨隆量として算出した.膨隆量は治療開始後の日数に従って、測定開始時の2.3mmから、5ヶ月後に0.5mmにほぼ線形に減少し、減少速度は1ヵ月あたり0.3mmとなった.データ数n=18、相関係数はr=0.96.膨隆部は全体的に縮小し、牽引痛は解消したことから、鼠径ヘルニアに対する鍼灸治療の効果が示唆された.鍼灸治療を行うことで、発症から外科手術までに4年間の猶予期間を生み出すことができた.

キーワード 鼠径ヘルニア, 脱腸, 狐疝, 商丘, 大巨, 奇経, 東洋医学, 鍼灸治療

(令和6年10月23日受付)


大塚 信之
photo 1985年 東北大学卒業
1987年 東北大学院博士前期課程終了
1997年 博士(東北大学)
1999年 蛍東洋医学研究所設立
2017年 明治東洋医学院専門学校卒業
漢方、鍼灸、気功など、東洋医学に関する研究に従事


所属 Affiliation
 蛍東洋医学研究所, 大塚鍼灸院
 Hotal Ancient Medicine Research Institute (HARI), Otsuka Clinic

住所 Address
 〒560-0033 大阪府豊中市螢池中町3丁目8-14
 3-8-14 Hotarugaike-nakamachi, Toyonaka, Osaka, 560-0033 Japan

E-mail
 hari@otsuka.holding.jp


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